穏やかな日々の終焉(私の履歴書ep9)

前回で少し触れたのですが、私の人事部3年目に人事部長にOさんが就任されました。

これに伴い、私はまた人事・人材育成担当に復帰し、僕の後任の労政担当にはYEくんが異動してきました。

人事部門の担当役員は、すでに専務取締役に就任されていたYさん(物流企画課時代の元上司)となり、この新しい体制は、個人的には色んな面で仕事がやりやすく、充実し楽しい日々を過ごしておりました。

一方、人事部として煩わしい事案を担当することもありました。



労働裁判

時間を少し前に戻します。 

僕が人事部に異動したとき、会社はある裁判を抱えていました。

これは僕が人事部に異動する1年前のことなのですが、労働契約期間の満了をもって雇止めとしたパート社員4名が、退職後に社外の労働組合に加入し、当該組合を通して「私たちの退職は不当解雇であり無効である」と申し立ててきたのです。

さらに当該組合から団体交渉の申し込みがあり、その場で雇止め無効を主張してきましたが、会社としては「そもそもこれは解雇ではない。正当な手順を踏んで行った雇用期間の満了による雇止めである」として、その要求を拒否したことから裁判に発展したものでした。


この裁判の期間中、当該組合は街宣車を会社玄関に乗り付け、マイクを使って抗議行動をしてくるなどしたため、この対応に苦慮しましたが、一審の判決は原告の請求棄却となりました

相手の全面敗訴です。裁判所は「適切な手順に基づく雇用期間の満了に伴う雇止めである」と判断してくれました。

その後、原告は最高裁への上告まで試みましたが、結局は一審の判決が支持され、つまり会社の全面勝訴という結果になりました。

この時、僕は労政担当部長代理でしたので裁判の傍聴には何度も出かけましたが、判決文を読んだ後に感じたのは、「労働条件に関しては丁寧すぎるくらい説明することが求められること」と「適切な手順を守ることが大切であること」の2点でした。

勝訴は喜ばしいことながら、そもそも訴訟に至ったことは反省しなければなりません。

この経験は、今でも人事顧問としてのサービスに生かすことができています。



解雇事案

僕の人事部在籍中に期間に2件の懲戒解雇事案を取り扱いました

一つは業務上の横領で、もう一つは刑事事件を起こしたことによるものでした。

いずれも「普通の道徳観を持っていればダメだとわかること」をしでかした当該社員の責任なのですが、やはり解雇となると

  • 就業規則に「当該行為は解雇に相当する事案」だと定めているか
  • 不祥事を起こさないよう平素から周知や指導をしてきたか

という点が問われますので、ここを慎重に見極めて判断し、最終的に解雇という決断に至りました。

なお、前者(横領事案)については、所属長に対しても管理不行き届きとしてけん責処分としました。

この時、コンプライアンスに関しては、「知識・意識・風土・仕組み」の4つの視点での取り組みが必要であることを学び、これも今の仕事においても研修や顧問先での仕事に活用できています。


このように煩雑なこともありながらもその中で学びもあったし、何よりも良き上司、良きメンバーに恵まれ、穏やかな充実した日々でありました。



人事部のメンバーたちと

僕が人事・人材育成チームを担当していた時、メンバーの年齢は23歳~33歳で、個性豊かで能力も高く、加えて自己研鑽に熱心なメンバーが揃っていました。

人事制度の運用など人事部の実務に関しては、この若いメンバーたちの方が詳しいので基本は任せることにしていましたが、さらに成長させるためにはどんな仕掛けが必要か考えながら彼ら・彼女らと接していました。

信頼関係の構築に努める

人事部に赴任するとき、僕のそれまでの言動からかなり警戒されていたようです(笑) 秘書室では部門業績評価を担当した関係で、役員や部門長と話す機会も多く、その時の言動から「うるさい奴が上司になった」と思われていたと思います。

したがって、その警戒を解き、信頼関係を築くことが最初の仕事だなと感じていました。

細かい口出しはしない

物流企画課でロジスティクスプロジェクトを推進し、営業企画部で業績報酬制度を設計し、そして秘書室でも会議事務局や社長補佐としてかなりの実務をこなしてきました。

したがって実務力に関しては負けない自信があったので、メンバーたちがつくる資料などにも細かく気になるところがあったのですが、それをあえて我慢して口を挟まないようにしました。

これらは動機づけにおける「承認」に該当し、以てメンバーたちの動機づけには繋がったのだろうと思います。



PDCAミーティング

マネジメントとして力を入れたのは、PDCAをしっかり回すことでした。 

そこで、毎月の月初・月央・月末の3回、チームでミーティングを行い、メンバーたちの業務の進捗状況を確認するようにしていました。

まず、年初にはチームをしての年間目標を定めます。これは僕の所属長たる役割です。

そしてこれをメンバーたちに分担して、さらにそれを月次の課題に展開させます。

次に、月次課題を前月末までに具体的な日程に落とし込んでもらい、この月初ミーティングで共有します。

さらに次に月央ミーティング(15日前後)で進捗を確認・共有し、問題や進捗遅れがあれば、ヘルプを出す、優先順位を変える、取りやめるなどの決定を行います。

月末ミーティングでは当月の振り返りを行い、なぜ達成できた、なぜ達成できなかった、未達成課題は今後どうする、などを確認するようにしました。


こういった取り組みは特別なことではありませんが、所属長としてメンバーたちの仕事の状況がわかるだけでなく、メンバー同士も互いの仕事の進め方を参考にしたり、確認しあうことで業際の発生を防げたり(発生していても早期に発見できたり)などメリットが多く、何よりも組織としての一体感が生まれたのではないかと思います。

そして、このPDCAミーティングを積み上げたものを年度の人事評価に反映しておりましたので、評価自体がやりやすく、また被評価者の納得性にも繋がったと考えています。



衝撃の情報

僕が近畿コカ・コーラボトリングに入社した1990年当時、日本国内には17のコカ・コーラボトラー社が存在していました。

しかしその17社体制に楔を打ったのが、北九州コカ・コーラボトリング(福岡、佐賀、長崎)と山陽コカ・コーラボトリング(中国5県)で、この2社が合併して「コカ・コーラウエストジャパン」という会社を1999年に設立していました。

この後、近畿コカ・コーラボトリングとコカ・コーラウエストジャパン(CCWJ)とは、この両社が共同で出資して三笠コカ・コーラボトリングを子会社化するなど業務提携の関係になっていましたので、こういったアライアンスが続くのだろうと思っていた2006年の春、近畿コカ・コーラとCCWJが合併するという情報が舞い込んできました。


そして、それは穏やかな日々が終焉を迎えることを意味していました。


(つづく)

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